ドローン撮影の極意

-青山祐介

【指定】ドローン撮影の極意

(参考)図1.映画撮影現場においてもドローンが活躍

ドローンを趣味や仕事で始めてみようという人がまず取り組むのが撮影です。カメラを搭載したドローンが空から撮ることもあり、広く「空撮」とも呼ばれています。ドローンで空撮をする場合、“撮影のためにドローンを操作すること”と“撮影のためにカメラを操作すること”という、大きく分けてふたつの技術が求められます。また、撮影は旅行やレジャーのスナップから、趣味の作品作り、そして業務としての撮影と、そのレベルはさまざまですが、ここでは特にスナップや自分自身の作品作りのためにドローンで撮影する場合のポイントを挙げておきましょう。

ワンカット”は最初から最後までのストーリーがキモ

(参考)図2.霧の有無で、取った映像の雰囲気がぐっと変わる

ドローンは“空飛ぶカメラ”とも呼ばれ、これまではヘリコプターや飛行機を使わないとできない空撮を、誰でも手軽にできるようにしました。そのため、ドローンを初めて手にした人は、まずは鳥から見たような高い視点で、広い景色や地上の様子を取れることに驚き、そんな景色を手当たり次第撮って楽しむことでしょう。もちろん、自分自身が楽しむことが一番大切ですから、旅先の景色や思いがけずであった光景を、ドローンの視点で記録しておく、という意味では大切です。

 ただ、ドローンで撮った写真や動画を人に見せる、となると少し話は変わってきます。自分自身が人の話を聞いて興味や関心を抱く場合と、そうでない場合があるように、ドローンで撮った映像を人に見せることが目的とするのであれば、やはり“何を伝えたいか”“どう見せたいか”ということが重要になってきます。そこには、“映像の狙い”や“ストーリー”といったことが必要で、映像を撮影するにもきちんとこうした狙いやストーリーを表現するためにどうしたらいいかを、あらかじめ考えておいたほうがいいでしょう。

 ドローンは“自分自身から離れて動くカメラ”なので、広い範囲の中でドローンを移動させながらひとつのカットで撮ることができます。ただ、この“ワンカット”による撮影は、キチンとテーマを考えて、録画開始から停止までのストーリーを考えないと、見る人が飽きてしまうことが多いといえます。動画投稿サイトに投稿されたドローンによるワンカットの動画作品の中には、映像の最初から最後までの随所に見どころが仕込まれていて、まるでたくさんのシーンをつなぎ合わせたひとつの動画作品のように、見る者を飽きさせない作品もあります。ぜひ、こうした作品を参考にしてみてください。

シンプルな動きこそ実はドローンの操作が難しい

(参考)図3.撮影意図を実現するには、機体及びカメラの高度な複合操作技術は必要

 こうしたワンカットの動画に対して、ほとんどの映像作品は無数の短い動画“カット”をつなげて、ひとつの作品に仕立て上げられています。特にドローンで撮影するカットは、高い位置から広い画角で撮影された状況説明的なカットやインサートとして使われることが多いといえます。こうしたカットには、パン(左右に回転させる)やチルト(上下に回転させる)といったカメラの動きに加えて、ドリー・イン/アウト(ドローンを前後に移動させる)やクレーン・アップ/ダウン(ドローンを上下に移動させる)といった、ドローン自体を動かすという、シンプルな動きが用いられます。

 パンやチルトは、カメラの前にある対象物や景色の左右方向の広がりや高さを表現する基本的な動きです。この場合、ドローンの位置は動かさずに、ドローンの左右旋回とカメラのチルト操作を行います。一方、ドリー・イン/アウトやクレーン・アップ/ダウンは、ドローンの前後進や上昇下降を操作して表現します。これらの動きはテーマとなる被写体と周囲の状況の関係を表現するだけでなく、例えばドリー・イン/アウトは景色の奥行きの深さやスピード感を表現できますし、クレーン・アップ/ダウンはテーマとなる被写体や景色の高さ表現するのに最適です。

 このほか、ドローンならではの動きとしてノーズインサークルが挙げられます。人物のような被写体に対して、その周囲をぐるりと取り囲むように機体を移動させます。円形のレールの上をドリーに載せたカメラのような動きができるこの動きは、ドローンの場合、さらにそこに高さ方向の動きを組み合わせることができます。機体の動きとカメラのチルトを組み合わせることで、被写体と同じ高さの周囲を回りながらだんだん高度を上げていき、最後は被写体の真上で回転するといったカットも撮影可能です。

 また、ドリーイン・アウトやクレーン・アップ/ダウンといった操作を組み合わせたり、さらにそこにカメラのチルト操作を組み合わせることで、さらに複雑な動きを表現することができます。そのため、こうした撮影を思い通りにできるように、日ごろからドローンの操作を練習しておく必要があります。

 例えば前述のノーズインサークルは、ドローンの回転と左右移動、さらに前後移動を組み合わせて滑らかに操作することが求められます。実際にやってみるとわかりますが、被写体の周りを回っている間に高度が変化したり、被写体との間合いが広がってしまったりすることがあり、それをきちんとコントロールする操作しなければなりません。その一方で、実はシンプルな動きこそ、ドローンの操作の上手下手が現れるとも言われています。

 例えばシンプルなドリー・イン/アウトですが、長い距離を移動する場合には、動き出してから中心となる被写体と進路がズレていることが映像上でバレやすいものです。とくに、撮影時の2倍、3倍の速度で再生するクイックモーションになると、一直線に飛んでいないことがはっきりわかってしまいます。さらに、横風が強い時や年式の古い機体でGNSSによる制御が弱い機体では、例えば道路のような本当に真っ直ぐな景色の上空をキレイに真っ直ぐ撮影しながら飛行するのは、実はかなり難易度が高いといえます。

ドローンの最新技術を生かしてオリジナリティのあるアングルを探す

ドローンによる空撮映像は、ドローンというものが世の中に知られ始めたころこそ多くの人に驚きを持って受け入れられてきました。しかし、今はドローンの映像がさまざまなメディアで当たり前のように使われ、目に触れるようになっているだけに、単に“ドローンの映像”というだけでは誰も関心を持ってくれません。それだけに、ドローンによる撮影が活きる被写体やアングル、光線を追求する姿勢が大事だといえます。

(参考)図4.簡単かつ安全に被写体に接近して撮影できる機種も増えている

 また、ドローンによる映像は一般的に“空撮”と呼ばれるように、空から地上を見下ろしたアングルが圧倒的に多いのですが、近年は小型のFPV(一人称視点)ドローンや、GNSSの電波が入らない屋内でも安定して飛行できるドローンが普及したことで、建物の中や狭い空間を飛行して撮影する映像も目にすることが増えました。その中で、単に見下ろすだけでなく、カメラを水平からむしろ見上げるアングルで、さらにそこにドローンの機動力を生かした映像は新しい視点だといえるでしょう。

 ドローンの技術は日進月歩で進化しており、今や屋外でもほとんど動くことなくホバリングできたり、機体が激しく動いても映像はまったく揺れないジンバルが搭載されるなど、こうした最新の技術を駆使すれば誰でも簡単に、安定した映像を撮影することができます。しかしこれを言い換えれば、同じような被写体や景色を何の思慮なくドローンで撮るだけでは、誰も関心をもって見てもらえる映像にはなりません。それだけに、人とは違ったアングルやカメラワーク、そしてなによりテーマを持った映像を撮るかが、とても大切なことだといえるのではないでしょうか。

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